BAKER’S RUSSIAN CALF

category: JOURNAL
update: May 15, 2016
staff:MIZUMOTO

160515_om1

先日のFEATUREでも取り上げていますが、ホワイトハウスコックスから新しい革を使ったシリーズが登場しました。”Made in England”のロシアンカーフ『Baker’s Russian Calf』です。

とはいえ、少々マニアックな要素が多くて予備知識がなければ???だった方も多かったかもしれません。「ロシアンカーフ」とは、18世紀のロシア帝国時代より高級革として西欧諸国に輸出されていたロシアを代表する革のことです。その後のロシア革命(このあと社会主義国家であるソビエト連邦の設立へとつながります)の頃に、この革の製法が失伝したと言われています。ロシアンカーフが「幻の革」と言われている理由のひとつがこれです。正直なところ、失伝云々については僕自身が正確な資料や文献を確認できていないので、詳細についてははっきりと断言できませんが、とにかく失われてしまった革であることは間違いないようです。
そして、1973年に、1786年に沈没した帆船「メッタ・カタリーナ号」が発見され、その積荷の中に輸出品だったロシアンカーフが見つかっています。それを海底から引き揚げ、塩抜きや乾燥などの再処理をすることで200年ぶりに現代に蘇りました。そのロシアンカーフは、一部のメジャーブランドが手に入れ、数量はかなり限定されながらもオーダーメイドの靴や高級革製品に使われてきましたが、その希少性の高さから一般に流通することは極めて少なかったので、その存在を知らない、もしくは、聞いたことはあっても見たことが無いという人が多かったことかと思います。これが「幻」とされるもうひとつの理由でもあります。
と、前置きが大変長くなりましたが、その幻のロシアンカーフをフランスの某高級ブランドが復刻させたいっ!と英国の老舗タンナーにリクエストしたことで今回の物語が始まります。その白羽の矢が立った老舗タンナーとは、あのヴィンテージブライドルレザーの生産も手掛けている<J.& F.J.Baker & Co.Ltd>。研究に研究を重ねた苦労の末にロシアンカーフの復刻を実現させたそうです。革の「なめし」には、白樺、柳、樫の3種類の樹皮を使い、タンニンの濃度を少しずつ濃くしながら4か月かけてじっくりとなめすそうで、この辺りの話を聞くだけでもゾクゾクしてきます。仕上げに白樺のオイルをたっぷりと染み込ませているので、ロシアンカーフの特徴でもある独特の香りもちゃんとします。この渾身の復刻革を、古くからのビジネスパートナーであるホワイトハウスコックスに「ほんなこつすごか革があるばい(本当に凄い革があるよ)」と紹介したことで、今回の新しいシリーズの誕生となりました。最後の方はさらっとまとめてしまいましたが、いくつかの縁が重なり合ったことで、この素晴らしい革を日本で紹介することができたわけです。

160515_om2

Baker社が手掛ける革には、独特の重厚感というか、歴史をまとったかのような風合いというか、別格の雰囲気があります。

160515_om3

初めて商品を手にしたときは、(正直に言うと)この白樺の香りを強烈に感じていましたが、次第に慣れてきますね(笑)。中毒性というか依存性というか、最近はあえて自分からこの香りを嗅ぎにいってしまいます。この香りは時間の経過と共に次第に薄れていくそうですが、この香りに慣れると、それはそれで寂しく感じてしまいそうですね。今回登場した『Baker’s Russian Calf』シリーズは、プライスも非常に高価ですし、個性も香りも強いので万人受けではないだろうと予想していますが、一部の好きな方にとってはビンビンに琴線に触れる逸品であることは間違いないと思っています。店頭で是非、実物を手にして、そして香りを嗅いでみてください。お待ちしております。

ITEM LIST